体験者インタビュー集

 

vol.14

川合友紀さん/1977年生まれ

2023年8月あわ居別棟滞在(2泊3日


 

-まずはあわ居別棟にご滞在頂いたときの、動機や、その時の川合さんご自身の状況などについてお伺いできますか?

 

 

元々、年に数回行くくらいに、石徹白の集落や白山中居神社、阿弥陀ヶ滝のことが大好きで。もともと興味のある土地だっていうのがまずひとつあったのと。それで・・・。あー・・・。夫と喧嘩して(笑)。夫と喧嘩してっていうか、ちょっと行き詰っちゃって。夫のお母さんが高齢で、一人暮らしをされていたんですけど、急に調子が悪くなってきて。ぼけてきたのが理由で、こっち(住んでいるマンション)に引っ越すか、引っ越さないかっていう話になって。あ、引っ越した後だったかな。私の背景としては、そういう時期だったんです。それで、夫との意見の相違と・・・。色々あって・・・。「あ、ちょっと一人になりたい」って。今向き合っても絶対喧嘩に・・・。なんていうんだろう、感情的になってしまうと思って。落ち着くまで一人で何も考えずに、一回態勢を整えたいって。丁度娘が二泊三日のキャンプに行く予定だったので。その集合場所が名古屋駅で、そこで娘をおろして、そのまま郡上や石徹白に行こうと。本当に何が自分を望んでいるのかとか。なんていうんだろう・・・。どうしてここまで夫に対して怒ったのかとか。そういうことを人にぶつけるんじゃなくて、自分でどうにかしたかったんですよ。自分で考えるというか、一回フラットにしたいなぁって思って。

 

ちょっとこれは後付けなんですけど、昔から私、海とか山とか、自然の中に行くと、一旦リセットされるというか、自分に戻れるというか。本来の自分ってこういう・・・。なんていうんだろう。ぶれてたなぁっていうのが分かるところがあったので。ちょっとそういうところに行きたいなぁと。それで前から気になっていたあわ居さんにご連絡させてもらったら、丁度空いてるっていうことだったので。

 

 

-確か、前日の朝にお問合せ頂きましたよね。それでチェックインは夕方だったと記憶しています。まず初日はどんな風に過ごされていましたか?

 

 

食材を買い込んで来ていたので、自分で好きに作りました。その時は辛いものが食べたかった。いつもだったら、そういうのは、他の家族がいると出来ないので。もう自分で思うがままにめちゃくちゃなご飯をつくり(笑)。食べたいものを食べる。お肉だけ焼くとか。そんな感じで、ホルモンが食べたいってなったらホルモンどっさりみたいな感じで、作って食べて。それで、飲んで(笑)。ビールとか日本酒とか、お酒も買い込んできていたので。一人で酒盛りをして。全然寂しくなかったです(笑)。

 

 

ー(笑)。結構遅くまで起きていらしたんですか?

 

 

いえ、そんな・・・。もう眠くなったら寝るみたいな感じで・・・。いや、音楽聴いていたのかな。二階で。何聴いてたかな・・・。ちょっと忘れたんですけど。

 

 

 

-食事が終わって、お酒も飲み終わって、それで二階で音楽を。

 

 

そうです、そうです。上でダラダラ、うにゃうにゃしながら、ずっと音楽聴いて。寝るでもなく、起きているでもなく。ぼーっとしてて。うん。普段聴かないような音楽だったような気がします・・・。娘といると、好きな音楽聴いてたら、絶対に替えてって言われるんで。そう、うん。聴いていましたね、ずっと。

 

 

-娘さんや旦那さんがいると、出来ないことというか、本当に心からご自身がしたいことを満喫していた。

 

 

そうですね、その時やりたいことを、やっていました。

 

 

-それで、二日目になって、朝食を食べられて。レイトチェックアウトだったので、チェックアウトの時間は十三時のご予定だったと思うのですが、たしかお昼前くらいに、「延泊を」ということをお伝え頂きましたよね。延泊をされようと思った背景はどのようなものだったのでしょうか?

 

 

あー、なんだろう。まだ気持ちがまとまっていないなって。自分の中でまだ足りない、もうちょっと私は一人になりたいって思った。あと、勿体ないっていうか。もうちょっとここに居て、なんかここで過ごしたいなぁって思った。

 

ずっと雨が降っていたじゃないですか。で、そのしっとりとした感じ。植物が雨に濡れるとか、木が雨に濡れるとか。しとしとっていう雨の音とか・・・。なんだろう・・・。昔、小さかった頃の感覚を想い出したっていうか。なんて言えば良いんだろう・・・。なんか、何もしないでぼーっとしてて。雨が降って。見慣れた植物というか・・・。山だったからかなぁ。なにか見慣れた植物が雨に濡れている姿とかを見てたら、なんか、あぁもうちょっと居たいなぁって。何かがすっきりするような感じがしたんです。うん、そうですね。小さい頃、若い頃に体験した自然の中での感覚みたいなものを久しぶりに想い出して・・・。もうちょっとここに居て、それに浸っていたいなぁって思ったんです。

 

 

別棟の窓越しに見える植物であったり、そこから聴こえる音であったりに・・・。

 

 

そうですね。縁側の窓を全開にして。最初はストレッチとかしていたんですけど。そのうち縁側の廊下で、そういうこともせず。ほんとに何もせず、ただぼーっとして。うん。遠くを見たり、雨を見たり、雲を見たり。ただ座って。ほんとそれをずーっと二時間くらい。

 

 

-二時間ですか・・・。確かにあそこの窓からの風景は、目の前に川が流れていて、植物が生い茂ってっていうのがあると思うのですが・・・。

 

 

でも逆に雄大な景色とかじゃないじゃないですか(笑)。ほんとに私にとっては、なんて言うことのない景色なんだけど。でもずっと居たいって思ったのは、それだったからかもしれない。

 

 

-逆に身近だったというか。

 

 

そうそう。ドクダミを見たり、花の名前は知らないけどよく生えている花を見たり。ヨモギが生えているなぁって思ったり。そういうのが、あの時の私には、すごい心地よかったんです。私が昔住んでいたのは、そこまで田舎ではないんですけど。九州の福岡で。今住んでいる所よりは緑も多いけど、石徹白ほどは田舎じゃない感じ。で、雑草で、小さい豆がついている・・・。カラスノエンドウかな。カラスノエンドウがうわぁーってあって。それが生い茂る土手みたいなのが家の近くにあったんです。それに寝転んで、草がわぁーって。横向いても草、こっち向いても草に当たる、草に触れるみたいな。そこでよくゴロゴロしていて。それが小さい頃、私にとって、すごく幸せだったなぁって。それを・・・。なんかそういうのを久しぶりに想い出しました。

 

 

-小さい頃というのは・・・。

 

 

一番記憶に残っているのは小一、小二くらいなんですけど。それが、うん・・・。そうですね、そういう小さい頃をすごく想い出しましたね。あそこの景色と、雨は。今マンションの三階に暮らしていて、そんなに都会っていうほど都会じゃないですし、ちゃんと緑はあるんですけど。それでも想い出すことはないですね。普通に生活していたら。あの時は、全部だった。五感全部。匂いもだし、感覚としても。あの時の空気。何を考えていたかまでは覚えていないですけど、その時の自分の気持ちとか、良い気分だったこととか。そういうのを全部想い出しましたね。触れた感じも。うん・・・。そうそうそうそう。

 

 

-普段は想い出せるものではなかった・・・。

 

 

そう。でもバラバラには想い出すかもしれない。昔こんなことがあった、とか。小さいころ、カラスノエンドウの原っぱでゴロゴロするのが好きだったんだよとか。そういう所では想い出せても、それがどんな感じだったかまでは想い出せないですね。そうなんですよ。でも別棟に居るときは、「あ、そうだったそうだった」って。それで、それがたぶん私がニュートラルに戻るっていうことに近いような気がしたんです・・・。なんて言えばいいんだろう・・・。今生活していて・・・。なんかでもね、感覚があるんですよ。自分がずれている感じ。普段生活していたらそれが当たり前だから分からない。ずれていることすら気付けない。でも別棟は、なんか呼吸が浅い状態で行ったら、呼吸が楽になった感じというか。深く息が吸える感じ。深く吐ける感じ。

 

 

-普段は、これが自分だ!っていうのが感じづらい中で、風景を見たり、雨の音を聴きながら、「あ、これが自分だったなぁ」みたいな感覚を、昔の記憶やその時の全身的な感覚を想い出しながら、別棟では体感出来ていたということでしょうか。おそらく、その時間が継続したとしても、チェックイン前の、日常のいざこざが解決するとか、それに対する解答が見つかるとか、そういうことが起きるわけではないですよね・・・。それでもそういう時間を、もう少し味わっていたいって思われたのは、今振り返ってみて、なぜだったと思われますか?

 

 

あの・・・。普通に心地よかったっていうのと・・・。わかんないですけど、例えば一人でいたいって思って、家で二日間を一人で過ごしたとしても、たぶん問題解決についてばっかり考えていたと思うんですよ。「相手がこうだから、こうで、私はこうだから、こう思って。どうやったら良いんだろう」って。でもそこでは答えが出ていなかったと思うんですよね。悶々として。堂々巡りじゃないけど。それよりも、なんか自分の内側をととのえる・・・。例えば自分が疲れている時って、イライラして、人にあたって喧嘩しやすくなったりとか、人に優しくできなくなったりとかする時がありますよね。

 

別棟にいたら、そういう疲れがとれるなって思ったから。こころの疲れ。それでそういう疲れがとれた状態で接したり、問題に向き合ったりしたら、ちゃんと自分の力と言うのか、そういうのが発揮出来るんじゃないのかなぁって。うん・・・。心がたぶんむちゃくちゃ疲れていたんだと思います。うん、それでちょっと、今旦那と向き合っても、良くない方向に行きそうだなぁっていうか。なんていうんだろう・・・。うん、自分じゃない答えを出してしまいそうな感じがしていたので。もうちょっと、もうちょっとと思って、二泊滞在しました。

 

 

-普通いざこざが起きると、その場で問題解決をしたくなることが多いと思うんですが、でもその時点でその問題について考えるんじゃなくて、一旦その現場から距離を置いて、まずご自身のフラットな状態を取り戻すことにベクトルを向けたわけですね。それで、二時間程、ぼーっと景色をただ見ていた時間があって。その後はどんなことが起きましたか?

 

 

あー・・・・・・。これ、言い方嫌なんですけど・・・。自分と繋がれたっていうか。なんかこの言い方嫌で、私はあんまり好きじゃないんですけど。なんだろう・・・。うん。直観とかも戻ってきたし。視界が・・・。考えることがクリアになって。勿論解決していないので、こころはモヤモヤしていたんですけど、でもああでもない、こうでもないじゃなくて・・・。

 

 

-視界がクリアになったっていうのは、問題に対して具体的に「こうしよう」っていう、そういうものが、見つかったということではおそらくないですよね・・・。もうちょっと抽象的なところでひらけたというか。

 

 

そう。そう。あの・・・。その起こっている事象っていうのは、いつも違うんですけど、同じポイントで夫と喧嘩してるなって。ずっと思っていたんですよ。で、なんでなんだろうって考えていたんですね。それで・・・。どっかで実は気付いていて・・・。自分なんじゃないかって。自分の・・・。なんだろう。鏡なんじゃないかとか。夫婦は鏡・・・。あぁ、ずっと思っていたかも・・・。あぁ違うなぁ・・・。夫もそうなんですけど、結構私、精神論じゃないですけど、人間の仕組み、こころの仕組みみたいなものを二人でよく話すんです。で、いつも同じポイントで喧嘩するっていうのは、自分の中に絶対なにかがあるって思ってて。でもそれが何かが見えなくてっていう感じだったんですけど。うん・・・。

 

あ、それで、話がすごい飛ぶんですけど、あわ居さんからの帰り・・・。チェックアウトして、とうもろこし(*1)を途中で買った後に、知り合いのところに行ったんですよ。結婚相談所の人のところに。私、結婚相談所で結婚したんですけど。その方は少し変わったところがあって、「もう一生の付き合いだから」って、婚活の時からずっと見ていてくれている人で。勿論、旦那のことは知っているし。そこの婚活でなんか・・・。こころを磨いたっていうか。こころの部分の話ばっかりだったんですよ。「モテるにはこういう服を着なさい」とかそういうことじゃなくて。こころのあり様とか、自分がどうやったら相手と幸せになれるかとか・・・。そういうマインドの話が多くて。

 

だから、その人にちょっと聞いてみようって。同じポイントで喧嘩ばっかりしてるって思ったことについて。で、話していくうちにちょっと気づいて・・・。小さい頃の思い込み、自分の思い込み。なんかわかんないけど、誰かから植え付けられた思い込みみたいなのをまだ手放さずに持っていて。そこが旦那の言動のある部分に反応して、敏感になってしまうっていうことに気付いて・・・。それは本当に・・・。誰もが持っているのかなぁ。ちょっとわからないんですけど。

 

ずっと・・・。何だろう・・・。いてはいけない子だと思っていたんですよ、ずっと。小さい頃から。たぶん何かあったんでしょうね。それをずっと引きずっていて。それがだいぶ薄れてきたと思っていたんですけど、結局そこだったんだなって。自分の全部をまったく肯定していなかった。自分をどこかでジャッジしていた。そういう状態だったんだなって、気付いた。そういうことに向き合うために、必要だったんです。あわ居さんの時間が。たぶん、あのまま感情的にイライラムカムカしたまま、同じようにその人に話をしにいっても、たぶんそういう風に気付けなかったと思うんですよ。こんなにはやく気付けなかったと思うんです。うん・・・。一旦ニュートラルに戻れたから、その後がサクサク進んだ気がする。

 

 

-ムカッとした状態でその方に話にいくことと、あわ居別棟での二泊三日を経て話に行くのとでは、川合さんの中から出てくるものや、問題や状況に対しての向き合い方の深さや角度が違った・・・。

 

 

そうですね。そう。それで、あの後大喧嘩をしたんです、やっぱり(笑)。もう全部をお互いが出し合うくらいのすごい大喧嘩。でも、その後すごい仲良くなって。

なんか一歩一歩夫婦に近づいている感じがしていて。それでまたその後、怒涛のようにいろんなことがあって。

 

義理の母が、私たちの住んでいる所の近くに引っ越してきて、これまでは普通に歩いていたし、普通に話せていたんですが、急にぼけちゃって。歩けなくなって。今は介護が必要になってっていう現状なんですね。それで、何だろう・・・。つながっているなぁって思って。今の生活にはやっと慣れてきたんですけど。その間も、いろいろと自分を保つのが大変で。でも今考えると、全部つながっているのかなぁって思って。

 

あの大喧嘩は、より深かった気がします。お互い本当の気持ちを・・・。深いところで言い合えて、深いところで知れて。「この人は本当に私のことを大切にしようとしてくれている」っていうか。信頼して良いんだ、みたいな。そのことを改めて・・・。揺らぎないって。本当に揺るがない土台が出来たっていうような喧嘩でしたね。ニュートラルになって、自分を出す準備が出来ていたんだと思います。態勢を整えるじゃないけれど。そんな感じだった。

 

 

-自分を出すっていうのは、感情的に出すのとは、また違った形ということでしょうか・・・?

 

 

・・・そうですね。まぁ最後は感情的でしたけど(笑)。でも、なんだろう・・・。うん・・・・・・。

 

 

-肯定感というか、「言ってもいいんだ」みたいな・・・。

 

 

・・・(三十秒ほど沈黙)。そうですね、うん・・・。今までだったらあきらめていたかもしれない。もうダメだ、もういいやって。これ以上はもういいや、無理無理みたいな。言うのも無理だし、言っても理解してもらえないみたいな。相手の話を聞くのも無理だしみたいにして、どこかで歯止めをかけていたんですけど。うん。

 

 

-感情的にわぁーって言ってしまうから、という理由で別棟に滞在されて、その後結局わぁーって出されたわけですけど(笑)。そのわぁーの出し方というか、自分の言葉を出してくる場所といったらいいのか。そういう部分に何かしらの変化があったということなのでしょうか。

 

 

そうですね、そこは違っていました。うん。あわ居さんに行った時は、もうわけが分からない怒りだったんですよ。なんで私、こんな感情が生まれてくるんだろうって。全くどこから湧いてくるのかわからない感情だったんです。怒りが。怒りだったり悲しみが。で、それがあの時間を経て、なんだろう・・・。落ち着いたっていうのもあるし、クリアな怒りだったり、クリアな悲しみだったり・・・。うん、そんな感じになりました。わけのわからん自分が言っている言葉と、ちゃんと自分の軸から発している言葉っていうのは、違うなって。

 

 

 

-わけのわからないっていうのは、一応自分から発しているけれど、少しそれが衝動的というか。頭の中だけで発しているだけの言葉と言ったら良いのか・・・。

 

 

そうそう、それもあるし、あとは自分の思い込みから、発してしまう言葉だったりとか。どうせ私はみたいな。だけど、ちゃんと自分の軸からというか、自分の軸が定まった時に発する言葉は、それとは多分違うんじゃないかなぁって今回思ったし、今も思っています。

 

 

-腹の底から・・・。

 

 

そうそうそう。ほんとそんな感じでした。だから、こっちも本気だから、向こうも本気っていうか。真剣に言葉を出してくれて。それで最後は大仲直りして(笑)。で、そこからやっぱりあの・・・。お互い感謝を忘れないようにしようって。色々と傾向と対策を出して(笑)。それで今に至ります。

 

 

-なるほど・・・。少し話を戻していけたらと思うのですが、二日目のお昼の、昔の記憶を想い出した時間があった中で、三日目のチェックアウトまでのお時間はどのように過ごされていましたか?

 

 

あの後は、石徹白の大杉に行ってきたんですよ。それでそのあと車で温泉に行って、別棟に戻ってきて、残りのホルモンと辛いものを食べ。そのあとは一人でカラオケ大会をして(笑)。誰もいないから(笑)。

 

 

-えー(笑)。まぁでも川の音で消されますもんね。

 

 

そう(笑)。でも一応気を遣って窓は全部閉めました。そう。人と(カラオケに)行くと歌わないような歌、自分の好きな歌ばっかり二十回歌うとか。そんなカラオケ大会をし、それで寝ました。

 

 

-余韻みたいなものもあったのでしょうか?昔の記憶が想い出された後の時間というのは。

 

 

そうですね・・・。あぁ・・・。あ、大杉・・・。石徹白の大杉に行った時に、大杉がなんかこう色々と話した気がして。石徹白の大杉さんが(笑)。で、「なんでも良い」って言われたんですよ。私は昔から石徹白の土地が好きなので、移住を考えた時期もあるんです。でもお義母さんのこともあったりで、頭がムニムニしていて。で、「ここ住んだ方が良いと思う?」って聞いたら、「どこに住んでも良いし、住まなくても良いし、人を愛しても良いし、愛さなくても良い。どうでも良い、どっちでも良いよ」みたいな感じで。「怒っても良いし、怒らなくても良いし、喧嘩しても良いし、しなくても良いし」みたいなことをずっと言ってくれて。それが、大杉の言葉だったのか、単に自分の心の声だったのかは分からないですけど。でも、どちらにしても、のんびりぼーっと別棟で過ごしたあの時間がなければ、それは聴こえてこなかったと思います。

 

 

-良い状態だったわけですね。

 

 

そう。それで、そうだよねーみたいな感じで、大杉にバイバイして帰ってきたんですけど。でも私、前も同じことを大杉に言われていたんですよ。「しなきゃいけないとかこうじゃなきゃいけないなんて一個もない」みたいな。もっと言うなら「恨んでも良いし、恨まなくても良いし」みたいな。「どっちでも良い」って。そのことも一緒に想い出して。そう。そういう風に、たまに会話みたいなのが出来るんです。他のものとも。でもそれはやっぱり自分がニュートラルじゃないと。そうなんです。そういう感じだったんです。すごく自分がすっきりしていたんだと思います。で、温泉に行き、カラオケをし、そのあと寝て。翌朝、近くの大師堂に行って、話を伺った。

 

 

 

-あわ居別棟で何かに向き合ったというよりかは、ゼロになったというか。向き合うこと自体はチェックアウト後にされて。向き合うための状態を作ったというか、ととのえたというか・・・そんな時間だったという印象を抱きますね。

 

 

あ、あとはあわ居さんから帰ってきて、あわ居別棟って、キッチンの窓から緑がすごく見えるじゃないですか。あれがすごく好きで。ああやって緑をみながら、料理をしたら落ち着くなぁっていう自分の性質が分かって。なので、家(マンションの三階)でも窓全開にして、カーテンも全開にして、そしたら若干そこからお山が見えることが分かって。だから今はお山を見ながら料理をしています。今までは家に居る時は、ずっとカーテン閉めていたんです。でも今は全開にして、夜も全開にして。それだけで、だいぶこころに風が通るというか。すーってするなぁって気付いたので。

 

 

-細かな変化ですが、それは、すごく大きな変化であるような気もしますね。

 

 

大きいですね。自分が何が好きで、どうしたら気持ちよく出来るのかっていうことが一個分かったっていうことだから。私にとっては大きな変化だなあって。それで、夫ともいつも話していたんですけど、山に移住しようって、お家を買おうって今話していて。来年から本格的に動き出そうと思っています。ご縁で、そういうところが見つかれば良いなぁと。

 

 

 

(*1)あわ居のある石徹白地区は、とうもろこしを一つの特産品としており、収穫の時期には集落内や峠道などで直接販売をしている。

 

 

インタビュー実施日:2023年12月13日

聞き手:岩瀬崇(あわ居)